ロードバイクを買うときに知っておくべき最新常識(選び方)

自転車界は続々とニューモデルが発表される時期が到来し、2021モデルの購入を考えている人も多いはず。そこで最新のトレンドを踏まえつつ、どんなロードバイクのモデルが自分に合っているか、選び方などをまとめてみました。

一見すると、どれも同じようにみえますが、ロードバイクは目的によって「レースバイク」、「エンデュランスバイク」、「グラベルロードバイク」の3つのカテゴリーに分けられます。

目的と自転車の設計が異なれば、使いにくいのは当然。そこで、なぜ、自分はロードバイクを買おうと思っているのか? もう一度、考えてみましょう。

通勤、ロングライド、レース……。

答えが出れば、選ぶべき自転車の方向性は決まったも同然。反対に明確な目的や目標がない場合は、買った後のバイクライフから考えるのも間違いを減らすことができます。

特に「レースバイク」が欲しい人は、トレーニングしてレースで上位を目指したいのか? を考えてみて下さい。

日本のサイクリストは欧米と比べて「レースバイク」を選ぶ人が多いのですが、ロングライドをするだけなら「エンデュランスバイク」で十分。気に入った自転車を買うことも大切ですが、「レースバイク」にこだわる必要はないでしょう。

荷物を積んでツーリングに行ったり、林道のような未舗装路も走ったりしたいなら「グラベルロードバイク(オールロードバイク)」が最適です。競う乗り方でなければ街乗りにも使えますが、車重が重いのが弱点。

通勤で使うなら、距離や環境にも左右されますが「クロスバイク」がオススメです。

それぞれのカテゴリーの違いをみてみましょう

【レースバイク】

日本で最も人気があるロードバイクといえば「レースバイク」。その名の通り、競技で好成績を収めるために開発されています。少し前までは空気抵抗の低減を図った「エアロバイク」と「レースバイク」は別カテゴリー扱いでしたが、2019年ごろからカテゴリーが再評価されるようになり、「エアロバイク」は「レースバイク」に統合されつつあります。

走行性能は剛性や加速性をセールスポイントにしており、高級モデルではハンドル&ステムにケーブル類を内蔵するタイプが流行っています。ホイールはリム高の高いディープリムを採用し、アグレッシブなスタイリングをしています。

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【エンデュランスバイク】

「レースバイク」と比べて、快適性の向上を追求したのが「エンデュランスバイク」です。設計上の特長はヘッドチューブを長く、ハンドル位置を高くして前傾姿勢を浅くしています。また、ホイールベースを長くすることで直進安定性を強めに、太めのタイヤでクッション性を高くしています。

最新モデルはヨーロッパの石畳を走るレースでも使われているものもあり、走行性能は「レースバイク」に勝るとも劣らないポテンシャルを誇ります。ロングライドに挑戦しつつ、耐久レースにも興味がある……そんな多目的な使い方に最適なバイクです。

【グラベルロードバイク】

現在、最も勢いのあるカテゴリーが「グラベルロードバイク」です。MTBのような極太タイヤを装着し、未舗装路も走れるのが特長です。タイヤのエアボリュームが大きいので、荷物を積載してツーリング車として使うことも可能なため「オールロード」や「アドベンチャーロード」と呼ばれることもあります。

基本的にはスチールやアルミフレームを採用し、コストを抑えたモデルが多くラインナップされています。ディスクブレーキの優位性を生かして、650Bと700Cという異なるリム径のホイールを用途に応じて使い分けるユーザーも多くいます。

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気になるモデルが決まったら、次は、サイズ選び!

メーカーのホームページにはフレームサイズごとに、推奨される身長がガイドされているので、初心者はこれを参考にして下さい。身長による判断は緻密さに欠けますが、残念ながら、最初は統計的な概算から算出するしかないというのが実状です。サドルやハンドルの位置は、ライティングスキルや体力が向上すれば変化してきます。

少々コストがかかっても、サイズ選びは慎重に進めたいという人は、専門メーカーのメソッドを利用してみるという手も。これは推奨されるライディングフォームを最初に把握し、それに合わせてモデルやフレームサイズを探し出すことができます。国内ではシマノが展開する『bikefitting.com』をはじめ、スペシャライズドの『BG FIT』&『RETUL FIT』、トレックの『Trek Precision Fit』、ワイズロードの『Bioracer』などがあるので、自宅近くのお店を探してみましょう。

Probikeshopで自転車を購入する際には『SMART FIT』を利用してみてください。『SMART FIT』は、性別、身長、腕の長さ、股下を入力して簡単にあなたに合った自転車サイズを調べることができるツールです。(下記画像参照)

予算オーバーにならないために!

予算は多いに越したことはないですが、自転車の他にもヘルメット、グローブ、鍵、ライトなどが必要となります。初心者なら最低でも10万円と考えて下さい。いずれはビンディングペダルやウエア、アイウエアなども欲しくなるので、予算ギリギリの自転車を購入してしまうと、後々、追加予算が必要となります。

アクセサリー類は予算を絞りがちですが、できればコストをかけましょう。例えば、ヘルメットは、グレードによって放熱性や重量が大きく異なり、快適性が大きく変わります。また、肌に触れるストラップの材質やバックルの使い勝手が違うので、一度上級モデルを使うと元に戻れません。なので、すぐに買い替えて無駄な出費をするのではなく、最初から質の高いモノを選ぶほうが安上がりなのです。

記事「2021モデルが登場! ロードバイク用の最新おすすめヘルメットと選び方」はこちら
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完成車のグレードは、フレーム素材とコンポの違いによって決まります

高級モデルと普及モデルの違いは、フレームの材質や採用されている部品の質の違いです。基本的に各部の寸法や角度といったジオメトリーは同じですが、フレーム素材がアルミとカーボンと異なれば、走行感も大きく変わります。それぞれの違いを簡単に紹介します。

【フレーム素材:クロモリ】
スポーツバイクに使われている素材で、最も歴史が長いのがクロモリ鋼です。鉄にクロムとモリブデンを添加した合金で正式にはクロムモリブデン鋼、クロモリは通称です。カスタムフレームでよく使われ、バネ感のある乗り心地を演出しやすく、エンスー系の素材として根強い人気を誇ります。完成車メーカーのラインナップとしては、入門用車やツーリングモデルに使われることが多くあります。

【フレーム素材:アルミ】
軽く、加速性に優れたフレームを作るのに適しているのがアルミニウム(以下、アルミ)です。コストを含めた性能バランスが高く、スポーツバイクの素材としてシェアがいちばん高い素材です。アルミには添加物によって1000〜7000系までの種類がありますが、フレームに使われるのは主に6000&7000系です。元来、強度の高い素材ではありませんが、熱処理と液圧成形によって最適化されて高い性能を発揮します。一般的に走行感は硬いといわれています。

【フレーム素材:カーボン】
現在、最も人気のある素材といえばカーボンです。正式にはカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)のことで、樹脂とそれを強化するカーボン繊維で構成される複合材です。複雑な素材設計や作業工程のため、素材から走行性能を語るには無理がありますが、高価なモデルほどフレームの剛性感が高く、重量が軽くなります。

コンポーネントの違いとは?

フレームが走行性能の骨格を決めるとしたら、コンポーネントパーツは筋肉に相当する役割を果たします。ギアの枚数や変速&ブレーキの質感を決めるのは部品です。安価なフレームでも高級パーツをつければ、操作感は上質になり、高価なフレームに安価パーツをつければ、走った感じも総じて安っぽくなります。

グレードの差は機械的な構造もありますが、精度と素材の違いです。ネジやインナーケーブルのわずかな差が積み重なって、大きな差として感じるようになります。また、買った当初は同じような性能でも、耐久性が異なるので、同条件であれば廉価モデルは寿命が短くなります。

コンポーネントパーツは性能と価格差が、最もはっきり現われます。フレームは、どんなに高価でも、好みが合わないこともありますが、コンポーネントパーツは安い方がいいという人はいません。予算が許すなら、初心者でも最高級コンポーネントパーツを使うのがベストチョイスです。

完成車メーカーはパッと見をよくするため、目立つパーツに高級品を用い、地味なパーツでコストダウンしていることもままあります。チェーン、スプロケット、ブレーキはサードパーティ製に変えられていることもあるので、フレームや変速機の性能を引き出すためには交換したほうがいいこともあります。カタログにあるスペック表を細部までみることも大切です。

消耗品とサイズ、形式の適合

タイヤ、チェーン、ブレーキパッド、バーテープは消耗品です。最初から上質な製品が付いていなくても、時期を見て交換していくといいでしょう。ただし、クランク長やハンドル幅は部品代や工賃も相応にかかります。購入候補のスペックをよく見て、ハンドル幅が広すぎたり、クランク長が長すぎたりする場合は要注意です。

タイヤもしっかりとチェックしてきましょう。タイヤを交換して、走行感に変化を持たせるのは、いつになっても楽しい作業です。タイヤ幅や空気圧を変えるだけで、同じ銘柄とは思えないほど走行感が変わります。現在の主流は25C。次世代は28〜30Cになるといわれています。2021モデルは32C対応の「レースバイク」も登場しており、23Cが標準仕様の場合、設計が古いと思って間違いないでしょう。

リムの形式はクリンチャー、チューブレス、チューブラーの3種類があります。廉価モデルではクリンチャーが、ミッドレンジ以上はチューブレスタイプが主流になりつつあります。

インナーチューブのないチューブレス&チューブレスレディタイヤは、転がり抵抗が小さく走行感が軽いのと同時に、パンクのリスクが小さいため人気を集めつつあります。しかし、専用ホイールが必要となるため、完成車を買うときもリムの形式は確認しておきましょう。


菊地武洋

菊地 武洋(きくち たけひろ)

自転車ジャーナリスト。
80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。
近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。
レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。