日本初上陸!素直さが魅力の『Pearl Cycles(パールサイクルズ)』

2022年5月下旬からProbikeshop(プロバイクショップ)が『Pearl Cycles(パールサイクルズ)』の輸入販売を開始します。世界的にロードバイクが品薄状態の中、納車までのリードタイムが短いのも大きな魅力! 今回は、ロードバイクの試乗経験が豊富な自転車ジャーナリスト・菊地武洋氏に、その真価を探っていただきました。
『Pearl Cycles(パールサイクルズ)』とは?
Pearl Cyclesは、南アフリカ出身のサイクリスト、ロジャー・ターナー氏によって、2009年、ドイツのハンブルグに設立された小さなブランドです。
ロードバイクの他にも、グラベルロード、MTB、トライアスロン用のバイクも生産。ロジャー氏は現在も現役サイクリストとして走ると同時に、アルミフレームはイタリア、カーボンフレームをアジアの工場で生産するプロデュースなども行っています。
本国のドイツの他にアメリカでも販売されており、オーストラリアも間もなく販売が開始される予定とのこと。
試乗車は、『Pearl Legacy (パールレガシー)』
今回の試乗車は、Pearl Cyclesのエントリーロードモデル『Pearl Legacy』。
フレームの開発コンセプトは、「エアロダイナミクス」、「快適性」、「軽量化」、「安定性」をバランスよく追求すること。
初心者から上級者までを満足させるのが狙いで、シンプルなスタイリングながらOffset Seatstays(オフセットシートステー)や、トップチューブ内蔵型のシートポストクランプなどトレンドを網羅的に押さえています。
『Pearl Legacy』はカーボンフレームに「シマノ・105」を搭載し¥ 350,000(税込み)
(シマノ・ティアグラモデルは¥ 328,000(税込み))。
スポーツバイク歴が長く、スペックに詳しい方でしたら、プライスタグに驚くかもしれません。
確かに以前はもっと手頃でした。しかし、コロナ禍や為替相場の影響を受けて、スポーツバイクは現在、2019年と比べて、40%程度の値上げも珍しくない状況です。さらに価格が上昇するという予測もあり、早い者勝ち状態はしばらく続きそうです。
『Pearl Legacy(パールレガシー)』のコンポーネントは?
それでは、スペックを丁寧にみてみましょう。
コンポは前述の通り、「シマノ・105」が採用されています。一般的には「スポーツバイクを本格的にするなら、「105」以上を……」といわれていますが、最近は、その捉え方は少し変わってきています。
昨年発表された上位モデルの「アルテグラ」は「ハイエンドスタンダード」とシマノは位置づけています。ですので、グレードが1つ下となる「105」の位置づけも「ハイエンド・エントリー」と考えるのが自然でしょう。
現在の感覚でいえば、「スポーツエントリー」は「ソラ」あたりが担っているので、「シマノ・105」を採用している『Pearl Legacy』は、入門者用としては少し背伸びした仕様となります。
また、スプロケットやチェーンといったコストカットされやすい部品も、しっかりとシマノ純正品を使っているのも見逃せません!
─ Spec ─
●フレーム&フォーク/レガシーディスク●シートポスト/オリジナル●ヘッドセット/オリジナル●ハンドル/デダ・RHM●ステム/デダ・ゼロ●ブレーキ/シマノ・105●ディレイラー/シマノ・105●コントロールレバー/シマノ・105●チェーンホイール/シマノ・105 53×39T 172.5mm●チェーン/シマノ・105●スプロケット/シマノ・105 11×28T 11S●ホイール/フルクラム・DB900●タイヤ/コンチネンタル・ウルトラスポーツ700×25C●サイズ/47、50、52cm
鋭い加速性を狙ったショートチェーンステー
フレームの設計で目にとまるのはチェーンステーの短さです。全サイズ404mmしかありません。リムブレーキであれば一般的な数値ですが、ディスクブレーキ仕様では410mm以上あるのが普通。
これは、加速レスポンスをできるだけ向上させるための方策といえます。
シートチューブの後ろ側がホイールの弧に合わせた形状となっているため、流行のワイドタイヤを装着してもクリアランスに問題はなく、シートチューブアングルとのバランスで考えると、28C相当であればキレイなまとまりを見せるでしょう。
フロントフォークのオフセットや、BBドロップ、キャスター&シートアングルのバランスをみるかぎり、シャープな加速性能やハンドリングになるように仕立てようとしているのがわかります。ですが、奇をてらわない範囲であり、オーソドックスにまとめられています。
魅力は、扱いやすい剛性と小気味よいハンドリング
現在のロードバイクは欲ばりです。
『Pearl Legacy』はフォルムからすれば空気抵抗の低減を狙ったエアロバイクですが、ホイールはディープリムを選択していません。また、チェーンステー長を短くしているのに、ワイドタイヤが装着できるようにクリアランスはしっかり確保されています。
空力性能を追求しているなら、クリアランスは限りなく小さくしたいところですが、ワイドタイヤの魅力とバランスを取りながら、エアロだけに振っていません。
他のメーカーもそうですが、エアロをうたいながら、扱いやすさも考慮したうえで仕様を決めています。
ロードバイク歴が長い方であれば、もうちょっとリム高のあるホイールのほうがスタイリッシュになるのでは……と感じるかもしれませんが、そうすると、ハンドリングが悪くなり危険です。エントリーモデルとしては極めて常識的なホイール選択といえるでしょう。
加速・減速時のフレーム剛性は見た目以上にマイルドです。程よくしなり、嫌な硬さを感じません。レーシーな雰囲気ではありますが、ロングライドをしたときの快適性を重視したのだと思います。
直進安定性も高めで気難しいところはありませんでしたが、ハンドルに舵角を与えたときの反応はキレがあり、スポーティーに仕上がっています。
バランスのいい『Pearl Legacy(パールレガシー)』
快適性を大きく左右する振動減衰性については、基本的にホイールやタイヤの選択、空気圧の管理で自分好みにするのが正解です。
フレームの減衰性能は車格相応なので、ホイール側の調整が大切。『Pearl Legacy』に装着されているホイール「フルクラム・レーシング800DB」はOEM専用で、リム幅は24.1mm(内幅19mm)で、対応するタイヤ幅は23-40mm。オンロード&グラベルロード用に開発されたホイールです。
クリンチャー&チューブレスタイヤに対応するリムなので、私なら乗り心地のいいチューブレスタイヤを選択します。リムが重いので重量の軽いタイヤで25Cぐらいが良さそうです。
ホイールに手を入れる予算があるようでしたら、40~50mmぐらいのカーボンリムにするとスタイルのバランスがよくなります。
旧型になりますが、11スピード対応のシマノ・デュラエース、アルテグラホイールあたりが狙い目となるでしょう。他にもマヴィック、DTもいいですね。ブルベのようなロングライドに挑むなら、ZIPP・303Firecrestでフックレスタイヤも組み合わせてみるのもおすすめです。
『Pearl Legacy』はバランスのいいバイクです。日帰りツーリングからエンデュランスレースまで、程よくこなす走行感は誰からも嫌われない素直さがあります。
パーツをグレードアップしながら、自分好みに仕立てていく楽しみもありますし、シンプルなペイントも現代的。人とは違ったバイクに乗りたい! そんな人にピッタリ1台です。
試乗車に装着されていたタイヤは競技者からも人気の高いコンチネンタル社の5000
シフトケーブル&ブレーキホースはすべて内蔵方式を採用
チェーンホイール&チェーンも全てシマノの純正品を使用
ブレーキロータ径はフロントが160mm、リアが140mm
ショートチェーンステー&エアロ効果が望めるシーチューブ形状
シンプルで洗練されたヘッドマーク。塗装はマット仕上げ
(写真:長谷川拓司)
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菊地 武洋(きくち たけひろ)
自転車ジャーナリスト。
80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。
近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。
レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。