2021年版 「クロスバイク」の選び方

ニューノーマルの移動手段として注目を集めているクロスバイク。通勤&通学はもちろん、フィットネスライドまでカバーする守備範囲と、手頃な価格設定で人気のある車種です。2020年は空前の大ヒットとなり、2021年も品薄な状態が予想されています。ファットタイヤやフロントシングルなど、トレンドを踏まえつつ愛車選びの指針をご紹介します。

走行距離と走行時間でわかるクロスバイクの予算感

ひとくちにクロスバイクといっても、用途も価格も違います。

積極的に自転車を楽しみたい場合、予算は5万円以上が目安になります。どのモデルを選ぶかは用途によっても異なりますが、想定している走行距離が10㎞ 程度までだったり、走行時間が30分以内だったりするのであれば、予算内で好みのバイクを買えば、どのモデルでも問題なく快適に走れます。

走行距離が10㎞を越えてくると、乗り心地のいい上質なバイクが欲しくなります。この場合は、7万円程度の予算を組んでおけば、かなり自由に製品が選べます。

重要なのは、サイズ選び

サイズの選び方は、完成車メーカーのホームページに記載されているものを参考にしてください。

どんなにカラーやスタイリングが気に入ったとしても、サイズが適合しない場合は、別モデルを探しましょう。

フレームサイズはおろそかにされがちですが、本来はスニーカーや靴のようにサイズの優先度が最も高いのです。高級モデルになると、設定サイズが細かくなり、よりフィット感の高い自転車となります。

走行感に影響を及ぼすフロント側のギアについて

残念ながら、クロスバイクの性能を正確に見抜く方法はありません。しかし、大まかな方向性を簡単に見抜く方法はあります。それはフロントギア(チェーンリング)の数です。元々はフロントギア(チェーンリング)が3枚からスタートしましたが、最新モデルの中には1枚のシングルタイプまで登場しています。それぞれに得手不得手がありますので、それぞれの特長をつかんでおきましょう。

【フロントシングル】

2021モデルから各社のラインナップで増えているのが、フロントギア(チェーンリング)が1枚の「フロントシングル」や「ワンバイ」と呼ばれるモデルで、フロントディレイラー(前の変速機)がないタイプです。

ギアの操作がリアのみなので、初心者でも変速操作に迷うことがありません。リア側にギア数の多い高価なパーツを使うため、総じて高価なモデルが多くなります。

フロントギア(チェーンリング)が1枚になっても最大ギア比と最小ギア比は従来と変わらないように設定されているので、急な上り坂でも「もっと軽いギアがあったらいいのに!」とはなりません。

【フロントダブル】

フロントギア(チェーンリング)が2枚あるのが「フロントダブル」です。

スポーツサイクルとしてはスタンダードな仕様ですが、平均よりもちょっと高価な6万円を越えるモデルから多く見受けられるようになります。際立った特徴はありませんが、バランスのとれた仕様です。

「フロントトリプル」と比べると、ギアの選択肢は少なくなりますが、高速でペダリングがしやすいというメリットがあります。

【フロントトリプル】

エントリーモデルに多いのが、フロントギア(チェーンリング)が3枚ある「フロントトリプル」です。

メリットはギアの選択肢が増えるので、どんな地形でも対応しやすくなることです。リア側のギアが8枚でも、フロントギア(チェーンリング)が3枚あれば8×3で24パターンのギア比となります。これだけあれば、高価なモデルに多い「フロントシングル」と同等か、それ以上になります。

ギア比はパターンが多い方が、負荷を調整しやすく疲れにくいというメリットがあります。ただし、フロントギア(チェーンリング)の数が多いので、左右のペダルの距離が広くなってしまうことと、重量が増えてしまうことが弱点です。また、廉価モデルが多いため、表面処理や変速性能は価格相応に留まります。

リア側のギア数で分かること

簡単に言うと、リア側のギア数は部品のグレードと相関関係にあります。高価になるほどギアの枚数は多くなり、素材の質や表面処理の丁寧さも違ってきます。

変速性能を決めるのは変速機だと思われがちですが、そうではありません。

ギアの歯先形状や表面処理が変速の正確性や質感、耐久性に大きな影響を及ぼします。そして重要なのは、トップギアとローギアのギアレシオ(変速比)です。

ローギアが大きければ大きいほど、キツい坂に対応できます。ですが、急坂とは無縁の地域に住んでいたり、長距離を走ることが少なかったりする人にとっては無用の長物となってしまいます。

理想のギアレシオ(変速比)は、トップギアからローギアまで余すことなく使う組み合わせです。ですので、大は小を兼ねるとばかり大きなローギアを選ぶのではなく、走るコースを考えてスペックを確認しましょう。

快適性を決めるホイール径とタイヤ幅

乗り心地や走行性能を決めるのがホイール関連の部品です。中でもタイヤは最も重要なパーツです。

タイヤが太くなれば空気圧を低くしてもよいので、乗り心地は良くなります。最新のタイヤは太くても、適正な空気圧であれば走行抵抗も小さいのが特長ですが、太くなると重くなるため、軽快な加速感はあまり期待できません。

現在、クロスバイク用タイヤの標準は30Cです。細いタイプだと28C、太いと35Cなども使われます。また、ホイール径はリムの直径が70㎝の700Cが標準的ですが、流行のファットタイヤを装着するモデルは、650B(27.5インチ)という一回り小さなサイズのホイール径を採用し、47Cという極太タイヤを装着します。これはタイヤの外周部で計測すると700C✕30Cと同等となります。

フレームがディスクブレーキの場合、700Cと650Bのホイールをそれぞれ装着できるので、用途に応じて平日の通勤時は700C、休日はツーリング仕様で650B……と、使い分けることも可能です。

ブレーキの種類はリムとディスクの2種類

ブレーキの形式は伝統的なリムブレーキと、最新のディスクブレーキがあります。

リムブレーキはコストが安く、長く使われてきた歴史があるため高い完成度を誇ります。ただ、雨天などでは制動力の低下が大きく、タイヤを保持するリムを削ってしまいます。リムが磨耗したときは、ホイール交換、または、リムの交換となるため、交換費用は高くなります。

一方、ディスクブレーキには機械式と油圧式があります。ホイール中心部にあるローター(回転子)をパッドで挟んで減速させるため、ローターが磨耗しても交換費用は安くすみます。また、制動性に優れており、雨天でも制動力の低下が小さいのも大きな魅力です。

油圧と機械式の違いは、機械式はワイヤを引っ張ってパッドを動かすのに対し、油圧はケーブル内のオイルが移動して制動力を得ることです。機械式はメンテナンス性が、油圧式は軽い操作性がアドバンテージとなります。

フレーム素材で走りの質も変わる

同じ部品、同じ寸法で作られていても、フレームの材質によって走行感が変わります。

クロスバイクで主流の素材はアルミニウムですが、オーセンティックな雰囲気のクロモリや、競技用バイクではお馴染みの軽量素材のカーボンを使ったモデルもあります。素材だけで乗り心地を判断することはできませんが、それぞれの違いを簡単に紹介します。

【フレーム素材:クロモリ】

スポーツバイクに使われている素材で、最も歴史が長いのがクロモリ鋼です。鉄にクロムとモリブデンを添加した合金で正式にはクロムモリブデン鋼、クロモリは通称です。

カスタムフレームでよく使われ、バネ感のある乗り心地を演出しやすく、エンスー系の素材として根強い人気を誇ります。

完成車メーカーのラインナップとしては、極太のファットタイヤを装着し、細いフレームとのコントラストでメリハリの効いたスタイルのバイクに使われています。

【フレーム素材:アルミニウム】

軽く、加速性に優れたフレームを作るのに適しているのがアルミニウム(以下、アルミ)です。

コストを含めた性能バランスが高く、スポーツバイクの素材としてシェアがいちばん高い素材です。

アルミには添加物によって1000~7000系までの種類がありますが、フレームに使われるのは主に6000&7000系です。元来、強度の高い素材ではありませんが、熱処理と液圧成形によって最適化されて高い性能を発揮します。一般的に走行感は硬いといわれています。

【フレーム素材:カーボン】

レース用バイクでは高いシェア誇るカーボンですが、クロスバイクで使われることは稀です。

ちなみにカーボンと略して呼ばれることが多いのですが、正式にはカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)のことで、樹脂とそれを強化するカーボン繊維で構成される複合材です。複雑な素材設計や作業工程のため、素材から走行性能を語るには無理がありますが、高価なモデルほどフレームの剛性感が高く、重量が軽くなります。

希望に叶う一台を!

初めての一台としてクロスバイクを買う方は、鍵やライトが必需品となるので、予算を組むときに考慮してください。

中にはスタンド、鍵、ライトが標準装備されているモデルも少なくありません。それぞれに購入すると5000円以上するので、ちょっと高めのモデルでも、アクセサリー付きの場合は割安になることもあります。

2021年モデルは品薄な状態にあり、すでに次回入荷は7月以降とアナウンスしているメーカーもあるほどです。できるだけ希望に叶うモデルが見つかるといいのですが、サイズが合わないときは買うのを断念して、違う候補も探してみましょう。

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菊地武洋

菊地 武洋(きくち たけひろ)

自転車ジャーナリスト。
80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。
近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。
レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。