いいヘルメットとはナニか?
デザイン、軽量性、通気性、コストパフォーマンス……人によって重視機能は違うだろう。しかし、心地よいヘルメットと出会ったときの喜びは格別。
“こんなもんだろう”、“どこも問題がない”といったヘルメットは多くある。だが、身体の一部のように馴染み、好みのデザインや機能性といった条件を満たす製品には、そう簡単に出会えない。
ヘルメットはファッション的な要素も大切だが、基本は頭を守るためのアイテム。プライオリティーはフィッティング、安全性、通気性。こういった機能からアプローチするのが正解だ。
進化を続ける安全システム

スポーツバイク用ヘルメットの安全性も、単純にぶつかったときの衝撃を緩衝する能力だけでは語れない。重量は軽い方が疲れにくいので安全だといえる。
MIPS(ミップス:Multi Directional Impact Protection System)は、衝撃を受けたときに頭部をスライドさせて脳へのダメージを軽減させるシステムである。1996年から研究が始まったそうだが、ヘルメットにこの機能が搭載されるようになったのはここ5年ぐらい。
以前は、ヘルメットの性能を評価する際にウエイト or ヘルメットを垂直に落下させていた。つまり、垂直に転ぶことを想定して、開発されていた。しかし、MIPSは、回転運動を伴いながら転ぶ点に着目し開発されている。ヘルメットの内側を見ても大きな違いはないが、脳に与えられるダメージは大きく軽減されることが分かっている。
当初はトップモデルのみに搭載されたため、ちょっと古い製品にはMIPSが搭載されていない。ヘルメットの買い替えは3年が目安。MIPSと同等の安全システムが未搭載のヘルメットを使っているなら、そろそろ買い替えを考えてみよう。
フィット感は重要!

日本人と欧米人は頭の形が違う。簡単にいえば、一般的な日本人は欧米人よりも後頭部が絶壁で、顔の幅が広い。そのためヘルメットメーカーの中にはAF(アジアンフィット)モデルを設定しているところもある。ただ、後頭部にあるサイズ調整システムの性能も向上し、様々な頭の形状やヘアスタイルに対応できるので、神経質になる必要はない。ただ、試着に勝るモノがないのも事実である。
試着するときは店に断った上で、顎紐のセッティングまでしっかりと行う。ストラップの質感は肌に当たったときの感触を左右するし、バックルの形状によっては脱着時の操作性、位置は走行時に首と擦れて痒くなることもある。他にもサイズの調整のしやすさ、パッドの位置や感触など、被り心地に関わることは、すべて一つひとつ丁寧にチェックしていく。その上で頭を動かして、重さを判断する。こうして手間を惜しまずにチェックすることで、自分に合うヘルメットを探すことができるのだ。
季節によってヘルメットの使い分けもオススメ!

夏のライドに限らず、放熱性は重要な性能である。しかし、こればかりは走ってみないと、本当の性能は分からない。メーカーは様々な革新をうたうが、ヘアスタイルによっても違いはあるだろう。このため、ベンチレーションの数や大きさ、シェル内部の凹部などから想像していくしかない。ちなみに筆者は、冬はエアロタイプ、それ以外の3シーズンは放熱性の高いヘルメットと、両者を季節に応じて使い分けている。基本的には涼しい方がいいが、そうなると真冬は寒すぎる。ウエア同様、ヘルメットも使い分けるのがおすすめだ。
おすすめヘルメット10選
パッドと一体化したMIPS AIRで極上の快適性/MET・TRENTA 3K CARBON MIPS

UAEエミレーツチームのエース、T・ポガチャルが愛用する最高級モデル。パッドと一体化したMIPS AIRは数あるMIPSシステムの最軽量バージョンで、フィッティング性とクーリング性を高度にバランスさせている。フィットシステムのSAFE-T ORBITALは垂直方向に4段階、左右の後頭部接触位置を2段階で調整できる。重量/225g(Mサイズ)
LED製テールライトを装備した/BELL・FORMURA LED MIPS
脳へのダメージを軽減するMIPSシステムを手頃な価格で搭載した人気モデルの『FORMURA MIPS(フォーミュラ ミップス)』に、さらにLEDテールライト(20ルーメン)を追加した『FORMURA LED MIPS(フォーミュラ LED ミップス)』。放熱性を示すベンチレーション数は19、帽体の剛性を確保するためポリカーボネート樹脂製のインモールドフレームを採用している。重量/303g(Mサイズ)
エアロ・放熱・軽量化を高次元でバランスさせた/GIRO・ECLIPSE SPHERICAL

昨年(2021年)、ツール・ド・フランスに投入され話題を集めたニューモデル『ECLIPSE SPHERICAL(エクリプス スフェリカル)』。最大の特長は2分割型アウターシェル構造の最高級MIPSシステム「SPHERICAL」を採用したことにある。また、テストデータによると時速40㎞で160㎞に走行したときに、エアロヘルメットの『VANQUISH(ヴァンキッシュ)』よりも1分ほどタイムを縮められる。さらに14個のベンチレーションの位置と大きさを最適化、最高級モデルに迫る放熱性も両立している。重量/275g(Mサイズ)
風を制するシールド一体型ヘルメット/OGK・AERO-R2

トラック競技の製品開発からヒントを得て、大ヒットしたエアロヘルメット『AERO-R1(エアロ R1)』の2世代目となるのが『AERO-R2(エアロ R2)』である。新構造のアジャスターはBOAダイアルを採用し、YKKと共同開発したアンチスリップバックル、サングラス用ラバー、新型シールドなど大きな進化を遂げている。そして、日本人の頭の形状を知り尽くした国産メーカーらしいフィット感は、今作も他の追随を許さぬアドバンテージだ。重量/245g(S/Mサイズ)
軽さと極上のフィッティングを実現/OGK・IZANAGI

フロントパッドとアジャスター機構を連動させて、頭を全体的に包み込む極上のフィッティングと、大型のエアインレットを採用した『IZANAGI(イザナギ)』。アジャスターはきめ細やかに調整できるように上下8段階に可動する。ストラップは消臭繊維に撥水加工を施し、重量増とさわやかな肌触りをキープ。また、インナーパッドは虫の侵入を防ぐA.Iネット、ウインターパッドを選ぶことも可能だ。重量/225g(S/Mサイズ)
レーザー史上もっとも速いヘルメット/LASER・Vento KinetiCore

ツール・ド・フランスを制したヨナス・ヴィンゲゴーや、プリモシュ・ログリッチが所属しているユンボ・ヴィズマチームが使用しているのがレーザー社のヘルメットだ。『Vento KinetiCore(ヴェント キネティコア)』はシェルの材料となるEPSフォームのブロック形状を最適化し、クランブルゾーンと呼ばれるエリアで衝撃を吸収する。後頭部のクロージャーシステムはヘルメット上部にある大型のベルトで調整するため、走行中にも簡単にアジャストができる。重量/290g(Mサイズ)
プロのアドバイスと風洞実験から生まれた/ABUS・AIRBREAKER

強靱なロックシステムで有名なABUSが、スペインのプロチーム「モビスター」をはじめとするプロ選手のフィードバックにヒントを得て、イタリアで製造している『AIRBREAKER(エアブレーカー)』。長距離に対応したパーフェクトなフィッティングと安全性、高い標高に対応した軽量化、高速域に対応したエアロダイナミクス、放熱性の4つの開発コンセプトを磨き上げ、名作として高い評価を得ている。重量/220g(Mサイズ)
スペシャライズド史上最高の冷却性能/SPECIALIZED・S-WORKS PREVAIL 3

前作の『PREVEIL II VENT』よりも開口部を24.5%も大型化。空気の流れがスムースになるようにブリッジを廃止し、放熱性が高まるようになっている。極限までシェルの面積を減らしつつ、保護性能を高めるためEPSフォームの内側にアラミド繊維製ケーブルによるAirCageテクノロジーを搭載している。重量/280g(Mサイズ)
カラバリ豊富なプロトーンの発展型/KASK・PROTONE ICON

2016年にデビュー以来、ロングセラーモデルとなった『PROTONE(プロトーネ)』が7年ぶりに進化。回転衝撃への対策として独自のWG11プロトコルを採用し、シェル内部の空気の流れと衝撃緩衝性を大きく改良した。後頭部にあるオクトフィット+リテンションシステムは、従来型よりも操作に優れている。インナーパッドは速乾性素材のクールマックスによって快適性が向上している。重量/230g(Mサイズ)
メディカルNFCを搭載する次世代ヘルメット/POC・VENTRAL AIR MIPS NFC

ヒットモデルの『OCTAL(オクタル)』と『VENTRAL(ベントラル)』をベースに空力性能を改善。ヘルメット内部に積極的に空気を取り込み、放熱性を向上させつつ、後頭部の形状に工夫を凝らして、乱気流の発生を抑えている。ストラップの材質や配置も見直し、フィット感と快適性を向上させている。また、医療プロファイルを保存できるNFCメディカルIDチップし、医療関係者に医療情報と緊急連絡先を提供することができる。 重量/260g(Mサイズ)